minor club house

ポプラ文庫ピュアフルから出してきたマイナークラブハウス・シリーズですが、以後はネットでやってくことにしました。とりあえず、版元との契約が切れた分から、ゆっくり載っけてきます。続きはそのあと、ボチボチとりかかる予定。

10

  引責問題

 

 

 時計が4時を回っても、チビどもは帰ってこなかった。

「おっせーなー……おれ、あそべねーじゃんか……」

 と、ミサキがゴネて、そこらへんの床を、ゴロゴロとむやみに転がりはじめる。

「そうね、ちょっと遅いわね……。ナオ、まりあの携帯に電話してみてくれない?」

「それって、これのことか?」

 と、リビングのテーブルの上に置きっぱなしの、防犯ベルのついた、ピンクの子供用携帯を指差す。

「あーれ、まあ。これじゃなんのために買い与えたんだか……。じゃ、ぴりかちゃんは?」

「あいつ、携帯持ってないんだよ。」

「うーむ、通信切断か。ま、どうせどっかで遊びほうけてるんだろうけど……。」

 と、徹子がため息をつき、再び時計を見上げた時、ばーんと玄関のドアを、乱暴に開ける音がした。

「ただいまーっ! おかーさん、兄ちゃん! 見て、見てー!」

「帰ってきた!」

 と叫んで、ミサキがダッシュしていく。

「とーる! よっしー! おれ、ずーっと待ってたんだぞー!」

「あー、ミサキ。ほら、これ見て、すげーだろー!」

「なにソレー!! すーっげー! どうしたの、こんなものー!」

 興奮するチビどもの大音声の会話に、リビングに残った奈緒志郎と徹子が、顔を見合わせる。

「なんだ? なにを持って……?」

「また、犬とか猫……」

 心配そうに呟いて、徹子は飲みかけの茶碗を置き、立ち上がる。

「うわっ、くっせーっ。なにこれ、とーる? コレなんのニオイ?」

「こっちも嗅いでみ。」

「うげー! くせー! しかもなんか、きったねえー!」

 揃って、げらげらと笑い出す。汚い、と聞いて、徹子は顔色を変え、びゅーっと玄関へ走っていく。

 しばしの間の後、

「……まあ、まあ、まあ! あんたたち!」

 今度は徹子が、呆れかえった声で叫ぶ。

 そして、堪えかねたように、どっと笑い出す。

「ぴりかちゃん……こんなに……まりあまで! あーあーあー、どうしましょ、これじゃまるで、おかーさんも完全に共犯だわ! あっはっはっは……」

 あまりにも笑い続けているので、とうとう奈緒志郎も腰を上げて、玄関まで見にいく。

 そして、たたきに並んだ4人の姿を見るなり、顔からどっと、血の気が引いていくのを感じる。

「兄ちゃん! ほら、これ、おれが自分で取ったんだぞ!」

「おれも! これ! シャベルで掘ってきたー!」

 全員、ドロだらけだった。透は、青々とした葉っぱのついたままのニンジンを一抱え。吉宗は、昨日のものに勝るとも劣らぬ、立派なキャベツを一玉。まりあは、両手一杯に菜の花を抱えこんで、全身黄色い花粉まみれになっている。

 そして3人の後ろに、ドロだらけ&ぬかみそまみれになったぴの字が、丸ごとの干し大根のぬか漬けを、片手に3本ずつ、高々と差し上げて、にんまりと笑っていた。

「あったじょー、高橋先輩! 園芸部室の窓、コジ開けて入ったら、ツボの中にびっちり入ってた! 今夜、一緒に食べようねっ。みんなで食べると、千倍くらいおいしいもん。ねっ!」

 明日、天野にどう言えばいいんだ……

 

 

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