minor club house

ポプラ文庫ピュアフルから出してきたマイナークラブハウス・シリーズですが、以後はネットでやってくことにしました。とりあえず、版元との契約が切れた分から、ゆっくり載っけてきます。続きはそのあと、ボチボチとりかかる予定。

3

  おじゃまチーム

 

 

「ホントに、こんなんでいいかなあ……」

 と、ふ菓子やらスルメやらの入ったコンビニ袋を鼻先まで持ち上げて、心配そうに呟く成田光明の横顔を眺めながら、コイツってホントにこーゆーことになると、途端にちゃきっとしねえな! と、八雲業平は思う。

「ここまで来てそんなこと言ってどーすんだよ……今からもっかい、この坂下るんか?」

「そーじゃねーけどよ。」

「いいって、大丈夫。あの人は割と、このテの食いもん大好きだから。」

「別にぴりかサンひとりに買ってきてるわけじゃねーよ。」

 俺も別に、ぴりか先輩のことだとは言ってねーけど……なんて減らず口が、喉まで出掛かったけど、直前でやめておく。この問題は多分、ミツアキの中では、すでに決着が着いている。

 たとえそれがどんなに辛くても、業平としてはべーつにそこまでストイックになることかー!? と思っても、本人の意思なのだから、どうこう言うこっちゃない。

「そう言えば、ここまではどうやって出て来たんだ?」

「職員のオバさんが、駅まで送ってくれた。いいオトモダチによろしくね……だとよ。」

「親切じゃんか。」

「まあ、な。いい人ばっかってのは、息が詰まってやりにくい……」

 そう言って、ボウズになった頭を、自分でしょりしょりと撫でてみている。

 黒く染め直したり、ヘタにスポーツ刈りにされたりするくらいならまだ、このほうがパンクだ! と、施設に放りこまれる直前に、自分でバリカンで剃り落としてしまった。

 阿呆どもめ、自分で働いて、自分を食わしていけるようになったら、もう誰にも、ヒトのアタマのことなんかで、文句は言わせねえんだかんな……

 夜の公園の芝生の上に、いっぱいに散らばった銀髪を見下ろして、なにか凄まじい目つきでにやりと笑いながら、ミツアキはそう言った。

 どうしてかなあ、と業平は思う。どうしてこの世界は、こんなにすげえ奴が、こんなにまで苦しまなくちゃいけないようにできてるんだ。

 いったい、俺とミツアキに、なんの違いがあって、ここまでの差が生まれなくちゃなんねーんだろ……

「あれ? あすこにいるの、ぴりかサンの親友のヒトじゃねーの?」

 と、前方を指差して、ミツアキが言う。

 緩いカーブを抜けたところに、滝先輩と、園芸部長の天野先輩が、それぞれ両手にスーパーのレジ袋をいっぱい下げて、坂道を上っているところだった。

「ホントだ! おーいっ。たーきせーんぱーいっ!」

 大声で呼ぶと、心なしか、滝先輩の歩調が、早まったような気がする。

 その脇で、天野先輩がこっちを振り返り、ぶんぶんと大きく手を振る業平を見つけて、傍らの滝先輩に、なにか言う。

 それで滝先輩が、ようやく後ろを振り返る……。なんか、ものすげえ凶悪なツラ。

「はよーございあーす! それ、鍋の材料すか?」

 と、言いながら追いついた業平たちに、

「はい。」

 と、自分の持っている袋のすべてを押しつけてくる。

「……え?」

「なによ。持ってくれるつもりでなければ、一体なんのつもりで呼び止めたって言うのよ。」

「あ、はい。はい。はい。」

 どうもむちゃくちゃに機嫌が悪い。逆らわない方がいい。

 

 

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