minor club house

ポプラ文庫ピュアフルから出してきたマイナークラブハウス・シリーズですが、以後はネットでやってくことにしました。とりあえず、版元との契約が切れた分から、ゆっくり載っけてきます。続きはそのあと、ボチボチとりかかる予定。

第四話 八雲業平、岐路にて痛みを知る縁

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Boys Don't Cry 打ち上げの間、ミツアキはずっと隅っこの方で、ひとりでギターをいじりながら、酒ばかり飲んでいた。 業平が隣に座ろうとすると、 「いいよ、これお前の部なんだからよ。最後くらい面倒見てやれ。」 と言って、追い払うような手つきをする。 …

9

見える奴には見えること 「ほいじゃ、文化祭ライブ大盛況、および、八雲先輩の部長引退を祝しましてえー」 「めでてぇのか、それはっ!」 音頭とった後輩の後頭部を思いっきり叩く。それが合図の代わりになって、ともかく全員、紙コップに入ったポカリなんぞ…

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本番です。 桃李学園中等部文化祭。高等部より、一週間先に開催される。 中等部は、部外者の出入りが、それほどフリーじゃない。生徒たちが、自分の保護者や家族、友人に入場券を配り、事前に名前と人数を、学校側に報告するようなかっこうで、全く無関係な…

6

しらんぷり 「なに、寝てんだ。」 と言う声に目を開けてみると、ミツアキが自分の中学の制服姿で立っていた。 「お。……直接来たんか。」 目をこすって、うーんと伸びをする。なんだか頭が、すごくスッキリしている。 「跨がれてたぞ、ここの人たちに。」 「…

7

つらいひと 「次。シュガーキューブス時代のビョーク。『バースデイ』の絶叫部分。」 と前置きして、ぴりか先輩がギターをつま弾きながら、とんでもない声を出す。 「……あ゛あ゛あ゛っはぉーん、あ゛あ゛あ゛、イーイはぉーん♪」 「おおお!? これを出せる奴…

5

昼寝にいいところ 「っはようございあーっす!」 と叫んで、演劇部の部室のドアをばーんと開ける。 業平はもう、ここへの道をすっかり覚えた。中等部の体育館裏から、新たな踏み分け道を、日々、鋭意製作中だ。 もうずっと以前から、自分がここの住人だったよ…

4

音合わせ 「っというわけで、2ヶ月後の文化祭にゲストで出てもらうことになった、高等部3年の土井陽子先輩と、1年の畠山ぴりか先輩だ! 全員、以後見知り置けーい!」 と、言い渡すと、中等部の軽音部員一同、蜂の巣をつついたような大騒ぎとなる。 そのカ…

3

遭遇 「しっかし、すげえカンちがい野郎だったな、あのボーカル。」 細い踏み分け道を歩きながら、前を行くミツアキが、けけっ、と思い出し笑いをする。 「ゴーヘー、気づいたか? あの、2曲目の、オン・ユア・なんたらいう曲。」 「お前のソロんとこだろ! …

2

コドモのケーザイ ミツアキとは、地元のスタジオ主催の、中高生バンドのコンテストで知り合った。もう、かれこれ1年以上のつき合いになる。 最初、業平は、自分の素性は隠していた。そういう場面で、桃李学園の生徒だ、ということがバレると、大抵やっかい…

第四話 八雲業平、岐路にて痛みを知る縁 1

Kick it! 「クソですよ。」 と言うと、部室の中は不気味なくらいにしーんと静まり返った。 桃李学園高等部、軽音楽部の部室。 中等部のそれよりも、一段と広く、最新の機材がずらりと並んだ、完全防音の教室。 「……なんつったんだよ、今。」 と、ドラムの後…