minor club house

ポプラ文庫ピュアフルから出してきたマイナークラブハウス・シリーズですが、以後はネットでやってくことにしました。とりあえず、版元との契約が切れた分から、ゆっくり載っけてきます。続きはそのあと、ボチボチとりかかる予定。

おまけ・マイナークラブハウスの縁談

5

飢えを満たす テーブルの上に並べられた食事を見つめるぴりかの目は、見たこともないおもちゃを見つめる、小さな子供の目に似ていた。 「……これ、全部……あたしの?」 ぐるりと料理を指差して、不思議そうな声で、そんなことを尋ねる。 「あれ、多かった? そん…

4

嗅覚と味覚の記憶 ぴりか、というおかしな名を持つその子を連れて帰ったのは、やはり、とっかかりが欲しかったからだと思う。 トラックを停めると、音を聞きつけた母親が、すぐに外へ出てきた。そして、助手席から降りてきた女の子をひと目見るや、 「まあ、…

3

極論 ぴたり、と天野の動きが止まる。 ずっと頭突きを喰らわせていたネムノキの根元に、ずるずるとくずおれて、丸くなって寝てしまう。そのまま、しーんと静まり返る。 「……死」 と太賀が言いかけて、やめる。「し」と発音しただけなのに、それが「死」んだ…

2

亀裂 なんの役にも立てなさそうだったから、紗鳥は、ひとりで先に帰ってきた。 縁側に腰掛けて、ぼんやりと遠くの山並みを見つめる。もう、1時間くらい待っているけれど、まだ誰も戻らない。 天野先輩、いったいどうしちゃったんだろう。高杢先輩と太賀先輩…

おまけ・マイナークラブハウスの縁談 1

シェルター 胸が痛い。足が重い。目が霞んで、世界がよく見えない。 なのに、止まらない。地理もわからぬ山奥の村の、白く乾いた土の道を、滝はどこまでも走り続ける。 意外だったわけじゃない。気づかないでいたわけじゃない。薄々感づいていた事実が、ここ…