minor club house

ポプラ文庫ピュアフルから出してきたマイナークラブハウス・シリーズですが、以後はネットでやってくことにしました。とりあえず、版元との契約が切れた分から、ゆっくり載っけてきます。続きはそのあと、ボチボチとりかかる予定。

2013-05-01から1日間の記事一覧

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再びの目覚めを望むか? ピピピッ、という、小さな音で目が覚める。 壁の向こうのキッチンで、ことことと、ぴりかが動き回っている気配がした。 ちょうどこの壁の裏側が、レンジ置き場だ。今の音は多分、電子レンジの終了ブザーだろう。 時計を見ると、まだ7…

9

生体反応 固まりになってやってくる、様々な面倒の最後を飾ったのは、尿意だった。 少年と話をしている間は、それでもどうにか我慢できたが、姿が見えなくなった途端、もう一刻の猶予もないような気がした。 かおりはハンドバッグをもって、そうっと車を出た…

8

重点を置く箇所 「そんな状態になっているのは、空腹のためですか?」 不意に背後から男の声がして、心臓が飛び上がるほどびっくりする。 「あるいは、寒さのために凍えているのですか?」 いつのまにか、ボンネットに突っ伏して、半分眠りかけていた。あわて…

7

意思が働く最後のライン 寒さで目が覚める。 ここはどこだろう、という疑問が頭に浮かぶまでに、そもそも何分もかかった。 腕時計をみる。ファッションウォッチの小さな文字盤は、この暗がりの中では読み取れない。かおりはハンドバッグから携帯を取り出し、…

6

宴 夢の子供たちは、その場で車座になり、箱を開けた。それは、お菓子の類いではなかった。 「しかし、でかしたな、ぴの字。こんなもの、よく持ち出せたな? えらいぞー。えらいえらいえらいっ!」 と言いながら、月代の少年がぴりかの頭を、犬にでもするよう…

5

冬の夜の夢 「はぁーい。みなさん、そこにいますかー?」 後ろで声がして、また一人、少女が現れた。 携帯の灯りで、足元を照らしながらやってくる。この子だけが、まともな制服姿だ。 「黒パンとバゲット、買って来たよー。あと、ソフトドリンクもいろいろー…

4

覗き窓 寒さで目が覚める。 ここはどこだろう、という疑問が頭に浮かぶまでに、そもそも何分もかかった。 腕時計をみる。ファッションウォッチの小さな文字盤は、この暗がりの中では読み取れない。かおりはハンドバッグから携帯を取り出し、時刻を確認する。…

3

no problem 奏がおかしくなったのは、小学校の4年生くらいの時だった。 「僕に話しかけないで。ママの言ってることは、どこかおかしいよ。聞いていると、頭が痛くなってくるんだ。」 そう言って耳を手で塞いで、かおりの前から逃げていった。 テレビの音声…

2

目眩 道路が混雑しておりまして、と言い訳すると、柳場という40代ぐらいの教師はにっこりと笑って、 「それは大変でしたね。お忙しいところ、わざわざお越しいただいて、ありがとうございます。」 と言い、かおりを面談室へと案内する。 こういう人は苦手だ…

第五話 畠山かおり、目覚めて夢を見る縁 1

シュトーレン 親愛なるカオリ あなた方が日本に帰ってから、8ヶ月が経ちました もう生活は落ち着いた頃でしょうか? ピリカはどんな様子ですか? 私も、ミシェルも、とても心配しています 先日、東京のDr.モリナガからメールを受け取りました 覚えておいでで…