minor club house

ポプラ文庫ピュアフルから出してきたマイナークラブハウス・シリーズですが、以後はネットでやってくことにしました。とりあえず、版元との契約が切れた分から、ゆっくり載っけてきます。続きはそのあと、ボチボチとりかかる予定。

2013-04-28から1日間の記事一覧

第三話 高杢海斗、探求への一歩を踏み出したる縁 1

毎朝劇場 「ダメなあなたが、好き」 と、その女の子は言うのであった。 ダメって、そりゃひどいなあ、などと、僕はいちおう、反論するワケである。 すると女の子は、そのかわいい顔を……それは、どんな男でも魅了せずにはおかない、幼さの中に秘められた匂う…

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猫はキュウリを食べるか? 「あ……ご、ご、ごめん、すぐ、片付けるからね……」 と言って、海斗は大慌てで、散らかった洗濯物をかき集める。 天野は、それを一向に気に留める様子もなく、鷹揚にひとつ頷いて自分の机に向い、授業の準備を始めた。 ルームメイト、…

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最凶コンビ 「高杢。あんたこれ、歴研の課題なんでしょ?」 ばごっ、と音を立てて、なにか固いものが、海斗の頭に落ちてきた。痛みにうめきながら手を上げて、つかんで、机の上に置いてみる。 『〈民主〉と〈愛国〉戦後日本のナショナリズムと公共性』……海斗…

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異端への道! 中等部3年の2学期、ほんの数週間程度だが、海斗はイジメにあった。 それは、書き出してみれば、別にどってことのない、かわいいイジメである。 1) 話しかけても無視されました。 2) 女子に「キモい」と言われました。 3) 男子から、性的な事で…

5

日々の活動 「『教室に置いてきました』……」 ぶるぶると回転する扇風機の涼風を、自分の背中だけで独占しながら、歴研会長、三浦光輝が四角いメガネの奥から冷たい視線を投げかける。 「……って。キミは今、そう言ったのかな? 高杢くん。」 「はあ。」 肩をす…

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猫と出会いやすい心理状態というものがある。 最近、毎日毎日、すごいたくさんの数の人と会話してる気がするな……。 本を取って、帰り道、また林の中の踏み分け道を歩きながら、海斗はふと、そんなことを考えた。 中等部にいる間は、学校で青田たちと、日々代…

7

赤い傘 セイちゃん、などというかわいらしい名で呼ばれて、天野はしかし、不滅の仏頂面のままで、しーんと冷たく福岡さんを見下ろしている。 しかし福岡さんは、それでひるむどころか、ますます確信を深めた様子で、 「その顔、その顔! その、人がなにを言お…

8

救出作戦 「わたしのせいで……わたしが、あんなネットなんかで、防ごうとしたせいで……」 大沢先輩は、地面の上にぺったりと座りこんで、慰めようもないほど泣いている。 猫はまだ、喚いている……騒ぎを聞きつけて、桃園会館にいたほぼ全員が集まってきていた。…

9

落下物 がさり、と再び枝がしなる。海斗はいつのまにか、手のひらにじっとりと汗をかいている。 「落ちるなよー、ぴりかたん……」 と、高橋先輩が、祈るように呟く。 「大丈夫、あの子は……」 と、自分に言い聞かせるように、よーこ先輩が呟く。 がさり、がさ…

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僕の歩く道 「ぴりかちゃんは……知らなかったんだよ。畑のもの取っちゃいけないって、多分、今まで教えられことがなかったんだ。キュウリが大好きで……いつもおやつに持ってくるけど、それは誰にも、親友の福岡さんにだって、一本もくれないんだよ。でも、お前…