minor club house

ポプラ文庫ピュアフルから出してきたマイナークラブハウス・シリーズですが、以後はネットでやってくことにしました。とりあえず、版元との契約が切れた分から、ゆっくり載っけてきます。続きはそのあと、ボチボチとりかかる予定。

2013-04-27から1日間の記事一覧

第二話 福岡滝、珍妙なる友を得る縁 1

designer 「あたしたちみんな、滝ちゃんの部下じゃないし、スタッフでもないし……もう、一緒の部で活動するのは、こりごりなの。」 びっしりと肩を寄せ合って立つ、顔なじみの女の子たち。みんながみんな、できるだけ前の人の陰に隠れるように、重なり合って…

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遠野くんは、それはそれはいい少年でした。 (よーするに、罪悪感……かな。) 朝の教室で、机にファッション誌を広げて眺めているふりをしながら、滝はぼんやりと考え続ける。 (……部活入るか入らないか、なんて、完全に個人の自由じゃん……遠慮してくれない? だ…

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女友達いないタイプ 「はい、みなさーん。お席についてー。」 立ち歩いていた生徒たちが、ばたばたと自分の座席に帰る。 起立、礼、着席はしない。柳場先生の主義だ。この学園では、教師個人の裁量で、そういうことをクラスごとに、自由に決めていいことにな…

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勧誘会 「まだ、部活決まってない人、いますか。」 と、柳場先生が片手を挙げながら尋ねる。教室のあちこちから、ぽつりぽつりと手が挙る。 滝はまだ、どこにも届けを出していない。けれど、「決めてない人は挙手」と明確に言われた訳でもないので、そっぽを…

5

まるくてあついものの追憶 解散、という指示が下るやいなや、1年生たちはどっとリラックスした叫びをあげて、出口へと突進していく。 外はもう、大騒ぎが始まっている……スピーカーから流れるポップス、チームの応援歌を合唱する体育会系男子のぶっとい声、…

6

葬列 鞄を取りに、一旦、教室に戻る。 それから玄関を出て、広い中庭を横切りながら、校門へ向う。ここらあたりは、文化部ばかりが固まっている。 吹奏楽部は、トワリング部とチームを組んで、お決まりの『ロッキーのテーマ』なんかやっている。反対側では、…

7

分散系 奇怪な葬列が、中庭をぐるっと一回りして、再び、ニセアカシアの林に入って行く寸前のところで、ようやく滝は、ぴりかに追いつく。 ぴりかは、完全にトリップしていた……。もう、あの死体から、すっかり目が離せなくなってしまっている。 細い踏み分け…

8

よりどりみどり 樽のような腰回りと、その半分の太さの、2本の脚。がっちりとした肩の上に乗っかった、下膨れのまんまる顔。 短くカットした髪の毛は、黒々として、針金のように固そう。今だって多分、汗に濡れただけでこんなに、つんつんと上を向いて突っ…

9

滝の怒り しーんと静まり返る。 演劇副部長は、しばらく、無表情で滝を見つめ返していたが、やがて、ほんの少しの困惑を浮かべて、ホールの真ん中の演劇部長に、助けを求めるような視線を飛ばす。 「ははは……気に入らなかった?」 と笑いながら、演劇部長が、…

10

満月 おなかがいっぱいになると、誰しも機嫌が良くなる。 結局、1年生たちは全員、ここの住人になることを決意したようだ。シソ研にひとり。歴研に二人。メガネの女の子、大村鈴は、「引退までの数ヶ月しか指導できないから」と断るウクレレ部長を熱意で押…